意欲的な挑戦が見られるが、ストーリーと世界観とのマッチングが取れていない
プレイステーション2の〈
ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター〉をクリア。
エンディングまでのプレイ時間は30時間弱と最近のRPGにしては短めですが、ストーリーの密度が濃いので、それほど物足りないとは感じませんでした。今回は戦闘システムが複雑化したぶん、街やフィールド上でのストレスを極力減らす方向でシステムが新しくなっている。やりこみ要素を極めようとすればそれなりの手間がかかるのですが、意識的に従来のコンピューターRPGの"作法"を改変しようとする意欲は評価したい。
物語の方は、ぶっちゃけ〈未来少年コナン〉なOVA版〈ジャイアントロボ〉。両作品を観ていると、なんとなくナンだかな~という展開が随所に見受けられます。ワイルドアームズシリーズの特徴として、独特のセリフ廻しとキャラクター描写の上手さが挙げられると思うのだけど、今回も練りこまれたキャラクター達の"ワイルドアームズ節"全開な濃ゆいトークを堪能させてくれる。ワイルドアームズ界では禁忌とされている(?)パーティー内恋愛も、それなりに成就してるし。主人公4人のポジションを〈未来少年コナン〉のキャラクターに対比させるとこんな感じ。まったく一緒というわけではありませんが、ラストのくっつき方は似たようなモンです。
コナン→ジュード
ラナ→ユウリィ
ダイス→アルノー
モンスリー→ラクウェル
なんだかなぁ~。
例によって世界のピンチになった所を主人公たちが解決するわけですが、今回は世界レベルでの大戦が終結してから10年後という戦後世界が舞台。戦争を知らない子供達が、戦争を体験した大人達と戦うという感じだけど、ぶっちゃけこの作品に登場する大人はどいつも"大人気ない"ので、議論してても青臭い書生論の応酬ということになる。まぁ、これはワイルドアームズという作品全体のスタイルでもあるので、それをどうこう言うのは野暮……というか、これを楽しめないようでは、ワイルドアームズシリーズはお勧めできません。落涙ッ! むしろ気になったのは世界観の方。戦後世界というよりはバブル崩壊後の"不景気な世界"ぐらいの印象なので、かつて専制主義と民主主義の2つの勢力の対立による悲惨な戦争があったというのが、言葉で語られる以上に作品世界から伝わって来ない。各地に放置されている、壊れた戦車が1種類しかないってのは、双方同じ兵器で戦っていたということだろうか? いっそ、2つの勢力が崩壊した戦後世界ではなく、戦争は終結したものの2つの勢力は水面下で対立しているという"冷戦構造"の世界にした方が、戦争云々をテーマにするのにはふさわしい世界観だったようにも思います。
システム面では意欲的な挑戦が見られ、練りこまれたキャラクターと耳に残るサウンド、盛り上がるストーリーとほろ苦いラストは良いのですが、演出のクオリティにバラつきがあるのと、物語と世界観とのマッチングが取りきれていない点が残念だと思いました。それと、「2国間対立」「戦争」「英雄」を作品要素に入れるなら、参考作品に〈銀河英雄伝説〉も入れておいた方が良かったんじゃないかと。